特別記事『曲紹介』前編

こんにちは!
ファゴット3年ことわです。
今回は特別記事ということで、残念ながら中止になってしまった第82回定期演奏会のパンフレットに掲載する予定だった曲紹介をみなさんに公開します!
(いつもは添削をしてもらうのですがその前に中止が決まったので、ところどころ「ん?」と思うとこもあると思います…ご了承ください。)

前編では、前中として演奏する予定だった2曲です。

 

ベートーヴェン / 《エグモント》序曲

ゲーテの悲劇『エグモント』は史実に基づいた物語であり、スペイン圧政下の16世紀後半のオランダで、祖国の独立運動に活躍した英雄として知られるフランドルの軍人ラモラル・エグモントを扱ったものである。
ゲーテはエグモント処刑220年にあたる1788年に戯曲『エグモント』を書き下ろした。

劇のあらすじは、国家反逆罪で捕らえられ、死刑判決を下されたエグモントを、気丈な女性で彼の許婚者であるクレールヒェンがどうにか救出したいと東奔西走する。あらゆる手を尽くしたにもかかわらず救出することができず、万策尽きて失意のうちに服毒自殺をしてしまう。死刑執行の時がきて断頭台に連行されるエグモントの眼前にクレールヒェンの幻影が現れ、その行為の勇気と正義と徳を誉め讃えて祝福する。斬首刑のエグモントと自ら生命を断ったクレールヒェンの愛が、死によって成就されるという「愛の死による救済」が描かれる。

1809年ウィーンはフランス軍に占領されるという不幸な時期を迎えており、人々は娯楽と社交から遠ざけられた日常生活に窮屈な思いを感じ始めていた。
こうした状況から、宮廷劇場支配人のヨーゼフ・ハルトルは宮廷劇場として『エグモント』の新演出上演を計画しそれに音楽を付けることを思いついたのである。その音楽を彼はベートーヴェンに委嘱した。

序曲は舞台上演の開幕時の序曲としてより、1つの独立した音楽作品として受容されてきた歴史が長い。それだけこの音楽には、演劇上演に優るとも劣らない劇的表現力が備わっていると言える。

この曲の1つのテーマは下降と上昇とのせめぎ合いであると思う。例えば、一つひとつ下行音形だが階段を一段ずつ上るように、全体としては少しずつ上がっていく、といった表現がある。このように、下りながらもなんとかして上昇していこうとする様が苦悩を表現しているようにも思える。全体を通して様々な下行音形が登場してくるが、その一つひとつをクレールヒェンの試行錯誤の様だと捉えると、音楽を通してその情景がありありと浮かんでくる。
そのような苦悩の末、最後にヴァイオリンの四度の下行音形が叩きつけられ、一瞬、時が止まる。エグモントの死刑の瞬間である。その後、黙祷が捧げられ、「勝利の交響曲」によるコーダが始まる。悲劇のフィナーレは幸福に満ちた響きの謳歌で閉じられるのだ。

(チェロ3年:けんすけ)

 

ビゼー / 《カルメン》第1、第2組曲より抜粋

——おきてなんて知ったことじゃない。好いてくれなくてもあたしから好いてやる、でも、あたしに好かれたら覚悟しな!——「ハバネラ」より(安藤元雄訳『カルメン』)

オペラ《カルメン》は、フランスの作曲家ビゼーによって書かれた。原作は、同じくフランスの作家であり、考古学者・歴史家でもあるメリメの小説『カルメン』。本演奏会では、組曲から抜粋した9曲を、オペラの展開順に演奏する。純朴な伍長ドン・ホセと、ボヘミア娘カルメンの恋とその結末。物語に沿って聴くことによって、異国情緒あふれる《カルメン》の世界を、よりいきいきと感じていただきたい。

第一幕。
1820年頃のスペイン、セヴィリア。はじまりは、「前奏曲」。低音楽器による暗く重い“運命の動機”が転調を重ねていき、突き刺すようなffの後静まり返る。物語の結末を示すかのようである。続いては、舞台に現れたカルメンが、ホセに色目を送りながら歌う「ハバネラ」。スペインの民族舞曲をもとにした曲調に乗せて、管弦楽ではトランペットが歌い上げる。

第二幕。
「アルカラの竜騎兵」。竜騎兵とは鎧を身に付け銃を持ち馬に乗った兵隊のことである。規則的な小太鼓とファゴットが兵隊らしい。竜騎兵の一員であるホセがカルメンのもとへと向かう情景が描かれている。カルメンはというと、酒場でタンバリンを片手に「ボヘミアの踊り」を踊っている。どんどん激しさを増し、熱気は最高潮に達する。盛り上がる酒場に闘牛士エスカミーリョが現れた。勇ましく「闘牛士の歌」を歌う。

第三幕。
フルートが美しい旋律を奏でる「間奏曲」。幕が開くと「密輸入者の行進」。ホセはカルメンの誘惑に負け、密輸入団に加わらざるを得ない状況に。岩山を進む一行。

第四幕。
「アラゴネーズ」は、スペインのアンダルシア地方の舞曲である。タンバリンの伴奏のもとオーボエが哀愁をおびた旋律を奏でる。最終曲は、「闘牛士」。カルメンを連れて、エスカミーリョが闘牛場に入場する際の曲である。そして、嫉妬と激怒のあまりホセがカルメンを刺す際に流れるのも、この曲である。

1875年3月に行われた初演は、内容の新奇さゆえに失敗に終わった。しかし「不道徳」という非難を聞き、逆に客が押し寄せたらしい。上演回数は増えていき、10月のウィーンでの初演は大成功を収めた。ブラームスやワーグナーも賞賛していたという。今日も非常に有名なオペラのひとつとなっている、本作品。時代や国を超えて人々を惹きつける、その魅力を届けることができたなら幸いである。

(ホルン3年:みけ)

どちらもストーリーがあってこその曲ですね。
これを読んで曲を聴くと、普通に聴くよりももっと面白く聴けそうです!

 

今回曲紹介を書いてくれた2人に、書いた感想を聞いてみました!

 

◇けんすけ◇
曲紹介をするのは自分の人生において初めてのことでした。最初は、「1つの曲に対して原稿用紙4枚分も書けるのかよ!!」という態度でしたが、実際、スコアなどを参考に書いてみると、書けること書けること、、、。
何枚でも書けますね😅

曲紹介をしてみて、まず、自分の曲に対する理解は深まったと思います。演奏者はスコアの最初の部分を読んでる人も多いと思うので、その曲にどういう背景があって、構成がどうなっているかというのは理解しているとは思います。自分もそのつもりだったのですが、改めて文字化してみると、気付くことや思い付くことがたくさん出て来ますね。やはり、自分でまとめてみるのは大事だなと思いました( ^∀^)

あと、曲紹介を書く上で意識するのは、演奏を聴きに来てくれるお客さんの事です。クラシックに詳しくて音楽用語をバリバリに使いこなす人もいれば、友達に誘われて来ただけで、普段クラシックなんて全く聞かない人など、様々なお客さんが来てくれます。そういう中で、「専門用語を使いすぎるのもダメだし、使わなすぎるのもあれかな、、」など読み手のことを意識しながら書きました。
そういう意味で、普段の大学のレポートなどとはまた違った書きにくさというものを感じられました。

クラシックの演奏会で曲紹介が何故あるのか。それはやはり、曲に対する背景やその曲の表現してるもの、作曲家が何を考えて書いたのか、などなどがとても重要だからだと思います。だからこそ、音楽を弾く方も聴く方も、その曲について勉強することはとても大事だと思います。
何より、その曲について深く知ると、聴いてる時に発見があったりして、聴いたり、弾いたりするのがさらに楽しくなります!
なので、これから早稲フィルに入団する皆さんには、曲を弾けるようになるだけではなく、その曲について調べてみるのもお勧めします!!
入団お待ちしています!!

 

◇みけ◇
オペラの流れと同じ順番で聴く楽しさが伝わるよう、ふかふかでほの暗い客席でも眠くならずに読めるように心がけました。
本来のオペラだけではなく、このオーケストラ用の組曲も、長く愛され演奏されてきたのには理由があると思います。ぜひ色んな演奏を聴いて確かめてみてください🎼
個人的には、カルメンに対して初めは情熱的で妖しく鋭い人というイメージを持っていました。しかし、原作等の本を読み、彼女は良い意味で縛られない、まっすぐで、信念を持った人という違った印象も抱くようになりました。『名作オペラブックス8カルメン』(音楽之友社)内の、歌手テレサ・ベルガンサの手紙が印象的でした。こちらには、ワーグナーから心が離れたニーチェが、カルメンを称賛する論の翻訳も載せられています。もし興味を持ったら読んでみてください🌼

 

前編はこれで終わりです。続けて後編も読んでくださいね!