こんばんは。35thセコバイのミッチーです(ー〇ω〇)ノ
今日は今度の定期演奏会の中プロ、R・シュトラウスの「ばらの騎士」について書いてみたいと思います。ぱちぱちぱちー
まずはざっくりとしたあらすじをば。
第一幕。大貴族の奥方である元帥夫人は若き主人公オクタビアンと不倫の関係にありました。しかし不倫といえども二人の愛は本物であり、互いに深く愛し合っていることを朝方の寝室で語り合っているシーンから、このオペラは始まります。まことにスキャンダラスな幕開けと言えるでしょう。
元帥夫人はしかし、オクタビアンの心がいずれはもっと若い女性にうつってしまうだろうと嘆きます。オクタビアンはそれを否定し、自分の気持ちは不変であると語ります。しかし、元帥夫人の悪い予感は現実のものとなります。
第二幕において、オクタビアンは使者≪ばらの騎士≫として大富豪ファニナル家を訪れ、そこで会いまみえたファニナルの娘ゾフィーと恋に落ちてしまうのです。
第三幕では、元帥夫人、オクタビアン、ゾフィーの三人が一堂に会することになりました。すでにゾフィーへの愛に生きる男となっているオクタビアンは、それでも元帥夫人との思い出を払拭することもできず、戸惑います。そんなオクタビアンに対し、元帥夫人はこういいます。
「愛する人のもとへお行きなさい」
元帥夫人の意図をはかりかねるオクタビアン。そして彼女に対して「マリー・テレーズ…」と呼びかけるところから、有名な三重唱が始まります。ここからは細かく見ていきましょう。
まず元帥夫人が歌いはじめます。清廉な響きを持って、しかしその裏に痛切な思いを抱いて、元帥夫人は歌います。
「私は心に誓っていました。あるべき形であなたを愛していようと。あなたの愛がほかの女性に移っても、その愛すら慈しむような愛し方をしようと」
すると、この元帥夫人のあきらめの主題に重なるようにして、今度はゾフィーとオクタビアンによる愛の主題が始まります。ゾフィーは自分が感じる不安と神聖さをして、「まるで教会の中にいるようです」と語り、一方でオクタビアンは「これでよかったのだろうか?元帥夫人に訊きたいけれど、それは許されない」と歌います。このあたりから旋律は徐々に厚みを増していき、あきらめと愛がともに高ぶっていくのが伝わってきます。
特に、元帥夫人のあきらめ。この三重唱が最も盛り上がる部分で、ゾフィーとオクタビアンがお互いに「君を愛している」と高らかに歌い上げている一方で、元帥夫人は「彼は幸せになるのだわ。ほかの男性たちと同じ幸福を得るのだわ」と、悲痛なまでに美しい歌声を響かせるのです。そして「これでいいのだわ」と言い残し、あふれる涙を気取られぬよう、一人退場していくのです。
これが、この「ばらの騎士」というオペラのハイライトにして真髄、コアになる部分です。
元帥夫人の心中、察するに余りある……そう思う一方で、誰もが一度はこのような経験をしていると思われるのは気のせいでしょうか?自分の立場をわきまえて、あえて身を引くせつなさ。それをまったく知らなければ、我々はこんなにも元帥夫人に感情移入することができないのではないでしょうか?
蛇足かもしれませんがもう少し書かせてください。
このあと元帥夫人は、大富豪ファニナル氏とともに再登場します。ファニナル氏はオクタビアンとゾフィーを見て、「若いとはこういうものですな」と元帥夫人に同意を求めるのですが、元帥夫人はオクタビアンと自分との仲を気取られないために” Ja, ja.”といかにも他人事のような調子の返事をするのです。この時の元帥夫人の心中もまた、察するに余りあると言わざるを得ません。
間違いなく「ばらの騎士」は傑作です。音楽も脚本も見事というほかありません。
今回定演で演奏するのは、このオペラを組曲風に編曲したものでありますが、この組曲版にもしっかりと三重唱の部分が入っています。ヴァイオリンなど様々な楽器のソロや合奏によって奏でられる三重唱の旋律、ぜひ演奏会場で聞いていただきたいと思います。その時この記事のことを少しでも思い出していただければ、本職の喜びとするところであります。
演奏会まであと一か月。最後までがんばっていきたいと思います。
ミッチーがお送りしました(ー〇ω〇)ノ