ロミオとジュリエット 終幕

こんばんは。35期セコバイのミッチーです(ー〇ω〇)ノ

あらすじで読むロミオとジュリエット、今夜はその最終回です。
ロミオとジュリエットは、出会いからわずか一週間足らずの間に愛を育み、そしてその愛ゆえに果てていったわけですが、この『あらすじで読むロミオとジュリエット』、初回を掲載してからなんと三か月が経ってしまいました。

時の流れは本当に早いものです。

一週間後に迫った定演の前に、なんとか最終回を迎えることができてほっと一安心です……
この記事を読んでくださった皆様、5月19日は、ぜひ神奈川県立音楽堂へ足をお運び下さい。

    早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団
   第68回定期演奏会


    シューマン/交響曲第1番「春」
   マスネ/組曲第七番「アルザスの風景」
   チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」


   指揮 松岡究
   日時:2013年5月19日(日)13:30開場・14:00開演
   場所:神奈川県立音楽堂 大ホール
   
   ・JR・市営地下鉄「桜木町」駅から徒歩10分
   ・京浜急行「日ノ出町」駅から徒歩13分
   ・みなとみらい線「みなとみらい」駅から徒歩20分
   ・横浜市営バス・京浜急行バス
    横浜駅東口バスターミナルから乗車
     *市営8、26、58、89、105、京急110系統
    「紅葉坂」下車徒歩7分
     *市営103系統「戸部1丁目」下車徒歩5分
   ※公共交通期間をご利用ください

   全席自由 800円/学生無料(早稲田大学関係者及び65歳以上無料)
   (未就学児のお子様はご遠慮頂いております、ご了承ください)


    フライヤー

ロミオとパリスの決闘は熾烈を極めた。
二人の男が一人の女を巡って行なうすべての戦いがそうであったが、この決闘もまた、どちらか一方が倒れるまで決して終わらないものであった。
二人の刃が交錯するたびに、鋭い火花があたりに飛び散り、薄暗い霊廟の中を一瞬だけ照らす。

人の世の喜びも悲しみも、一瞬のまたたきに過ぎない。

ロミオは、あっという間に過ぎ去ったジュリエットとの日々を思いつつ、全力で剣を振るった。
パリスの剣筋はするどく、ロミオといえども一筋縄ではいかない相手だった。
それでも、ロミオは己の勝利を信じて戦った。ほかならぬジュリエットの為に、彼は負けるわけにはいかなかった。
疲労がその身を徐々に蝕んでいくのを感じつつ、ロミオは全力の死闘を続けた。
そしてついに、その時はやって来た。

「パリス、覚悟っ!!」
「何っ?!」

気合一閃、ロミオの一太刀がパリスの一瞬の隙をついた。

「ぐわああああああああああああああっ!!」

深手を負ったパリスは霊廟の床に崩れ落ち、ぜいぜいと荒い息をしたかと思うと、ふっと静かになってこと切れた。
ひとり立つロミオは肩で息をしながら、パリスの亡骸にこう言った。

「………騎士の情けだ。君もジュリエットに会いに来たのだろう?せめて最期は、そばに横たえてやろう」

彼はパリスをジュリエットの傍らに横たえた。心なしか、パリスのデスマスクが満足げな表情に変わったようだった。
ロミオは自らもジュリエットの横にひざまずき、言った。

「ジュリエット、君は死んでいるはずなのに、どうしてこんなにも美しいんだ?まるで眠っているような君の美しさは、ますます僕のやるせなさを焚き付ける。だがそれも今すぐ終わりにしてやる。いまこの毒薬をのんで、君のもとへ行こう。君をひとりにさせておくものか!」

死が互いを分かつまでと誓った愛は、もはや散ったかに見えた。ジュリエットの死が、二人の信愛を引き裂いたかに見えた。だが、そうではないのだ。覚悟はできていた。

「ジュリエット、愛しているよ」

ロミオは毒薬を仰ぎ、果てた。

ほどなくして、ロレンス神父がやってきた。神父は霊廟の床が血で汚れているのを見て動転した。ありえない惨劇が起こったのだ。

「この血の池はいったい!?あれはロミオ?!死んでいるのか?!こっちにはパリスも!なんということだ!ジュリエット、起きなさい、ジュリエット!!」

ロレンス神父に揺り起こされて、ジュリエットはようやく目を覚ました。

「その声は神父様?ここはどこなの?私のロミオはどこに?」

本来ならば、彼女が目覚めた時、すべてはうまく収まっているはずだった。ロミオは目覚めた彼女を迎えに来ていて、二人は連れ立って街を出る。それですべてがうまく行くはずだったのだ。
だが、現に目覚めた彼女を待っていたのは、あまりにも恐ろしい悲劇であった。

「ここは死者が眠る霊廟だ。人知を超えた大きな力が、罪深い我々のたくらみを阻んだのだ。君の傍らには、君の夫が眠っている。その隣にはパリスもだ。さあ、おいで、ここから出よう。誰かが来るようだ。ここにいては、どんな罪の誤解をうけるかわからないぞ」

動揺していたロレンス神父は、それだけ言うのがやっとであった。この惨劇の場を一刻も早く離れたがっていた彼は、そそくさと霊廟から出て行った。
だが、ジュリエットはそこを動かなかった。

「どうぞ行ってください。私は残ります。ここには最愛の夫がいる。そう、この毒があなたの命を奪ったのね、ロミオ。あなたがいない世界に未練はありません。すぐ行くわロミオ。この短剣が、私をあなたのもとに導くでしょう」

彼女もまた、最愛の人のもとへ行くことを望んだのであった。迷いはなかった。
彼女は短剣を自分の胸に差し、死んだ。

一人の男と、一人の女が、時代の闇の中を駆け抜けて行った。
ほんの一瞬の二人の逢瀬に人々が見たものは、愛、戦い、そして運命。
いま、全てが終わり、キャピュレット家とモンタギュー家は、長年続いた意味のない対立に今度こそ終止符を打つことを誓った。

数ある悲恋のなかでも、ロミオとジュリエットの物語ほど痛ましいものはない。

                                              あらすじで読むロミオとジュリエット     
                                 =完=