秋の夜長に。

どうも、黒猫です。
先日は長々と好き勝手語ってしまい失礼しました。
しかし、反響がここに出るんじゃなくて直接言われるっていう・・・
ま、いいんですけど。
しかしサティなのに「ヴェクサシオン」について書くのを忘れてたなぁ。
いや、あれ以上長くするのもアレですね、うん。

ただ。
まぁもう少しぐらいフィルに関係ある話した方がいいんだろうなぁ、と気づいた。

というわけで。
突然ですが本日はちょっと本の紹介をしてみます。
カテゴリはCD紹介になってますが、まぁ気にしない。
秋の夜長、と言ってももう11月になってそろそろ冬めいてきそうですが
読書して過ごすのもよろしいのではないかと。
本日は今季プログラムのベト2にちなんで
ベートヴェンが主人公の物語。
と言っても
ある程度史実に基づいたフィクションで
話の中心にあるのは、モーツァルトの死の謎。
なかなか面白いミステリーに仕上がっています。
ちなみに乱歩賞受賞作。
タイトルは、「モーツァルトは子守唄を歌わない」。

モーツァルトの子守唄が世に出たとき
”魔笛”作家が幽閉され
楽譜屋は奇怪な死に様をさらす-

ナイス煽りですね。
講談社文庫カバー裏の煽り文句より引用しました。
なんかそそられちゃった方は「続きを読む」からどうぞ・・・


まずは基本スペックを。

「モーツァルトは子守唄を歌わない」
作:森 雅裕
版:講談社
1985年、第31回江戸川乱歩賞受賞作品。

舞台は、モーツァルトが死んでから18年後のウィーン。ベートーヴェンはハイドンの追悼式に向かう途中、モーツァルトの私生児と噂される女性歌手シレーネが、楽譜屋と大喧嘩している所に出くわす。彼女の戸籍上の父が遺した「子守唄」が、モーツァルト作とされたことに憤慨したのだ。「何かあるに違いない」とシレーネは訴えるが、ベートーヴェンは興味がない。しかし、ベートーヴェンのピアノ協奏曲公演の練習中に、楽譜屋の死体が発見された事から、彼は「子守唄」と「モーツァルトの死」に関する謎を追い始める・・・

とまぁこんな感じです。
物語はベートーヴェンの一人称で、小気味良いテンポの語り口。
作中では、自称37歳、の設定。そろそろ難聴気味。
彼と行動を共にするのは、冒頭に登場するシレーネと
ベートーヴェンの弟子であるカール・チェルニー。
ピアノ教則本で有名なあの人です。リストの師匠ですね。
そしてシューベルト少年も協力してくれます。
シューベルトの墓はベートーベンのお隣さんだそうですよ。
いやはや、なんという豪華キャスト。

そんな彼らが立ち向かうのがモーツァルトの死。
モーツァルトの死については諸説あって、未だ真実は闇の中ですが
本作では「モーツァルト謀殺説」をとりあげ、ベートーヴェンたちが謎解きに挑みます。
私は歴史的資料に疎いのですが
ウィーンの街が生き生きと描かれつつ、当時の情勢や音楽史上の転換期などを活かし、
秘密結社フリーメイソンや、ウィーン占領中でナポレオン指揮下のフランス軍などを巻き込んで、
飽きさせないストーリーが展開します。

この作品の魅力と言えば
物語の題材はもちろんですが
登場人物のキャラクター設定。
大抵の伝記で「粗野で気難しい」と書かれてしまうベートーヴェン。
作中は確かにその通り描かれているのですが
文句を言いつつも律儀に謎を追い、たまにはったりをかましたり、
かなりアクティブなベートーヴェンです。
さらに、弟子のチェルニーとの会話は掛け合い漫才のようで
テンポが良く読みやすい文章がそれを引き立てます。
その他の登場人物もかなり個性的で
特に頭の薄いホルン吹きのおじさんは良い味だしてます。

最初に申し上げましたが、これはある程度史実に基づいたフィクションです。
全部丸ごと信じてもらうと困ってしまいますが
ただベートーヴェンたちが生きた時代の空気だとか、作品背景などを知るのに
ちょうど良い入門書になってくれるはずです。
史実とフィクションの織り交ぜ方も上手く
何より、ベートーヴェンがちょっと身近に感じられるはず。たぶん。きっと。

さて、ここからは本編とはあまり関係のない余談ですが
この本、一度絶版しているんです。大人の事情だそうで。
不人気だったはずはありません。
絶版された本をよみがえらせる素晴らしい企画「復刊ドットコム」にて
数年前、復刊を果たした作品ですから。
なので今から手に入れたい方は残念ですが
復刊されたハードカバーを購入されるか
古本屋や図書館を探してみられるか
はたまた私に一言いっていただければ
かなり古いため状態が良いとは言えないものですがお貸しいたします。
でも本当に面白いので、お勧めしたいと思った次第で。
ちなみに本書の続編にあたる「ベートーヴェンな憂鬱性」という短編集があります。
こちらも絶版の後復刊されています。残念ながら私は未読ですが。

よろしければ是非お読み下さい。
黒猫でした。それではまた。